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脳の広範な活動を図形として可視化

研究イメージ画像
(Image by Triff/Shutterstock)
 神経細胞活動を可視化する技術を用い、脳の視覚認知に関わる活動を幾何学図形として抽出しました。物を認識したり記憶を思い浮かべたりする際に、側頭葉から前頭葉の神経細胞活動が刻々と変化し、異なる図形として可視化できました。さまざまな生活で観察される脳活動の抽出に役立つと期待されます。

 起床して時間を確認し、家を出て会社に着き、仕事をする。私たちのそんな日常生活の裏では、脳神経細胞が活動し、複雑に絡み合った事柄を処理しています。本研究チームは2023年7月、このような日常生活のさまざまな場面で起こる脳の神経細胞の活動を簡便に可視化する数理解析技術(PCArs)を開発、公表しました。PCArs技術は、観測された脳神経細胞の活動データの中で、どの事象が最も大切なのか、複数の活動があるのかなどを見つけ出すことができます。

 本研究では、PCArs技術をサルの側頭葉から前頭葉までの広範な脳部位の神経細胞活動に当てはめました。提示される図形を見て物の位置を覚える活動、提示された図形がもらえる餌の手がかりになる状況の活動など四つの行動状況を解析しました。その結果、物体の認識に関わる側頭領域ほど幾何学図形が円に近い割合が多かった一方で、記憶領域と考えられる海馬や前頭葉ではカーブや直線の幾何学図形の出現が増えました。

 このように幾何学図形に基づいて神経活動を分類した結果、視覚情報の認知?記憶?判断過程における神経集団の活動は時々刻々と変化し、異なる幾何学図形に分類されることが分かりました。

 この技術を脳全体の神経細胞活動に適用することで、時々刻々と変化する脳全体の活動をリアルタイムで画像化することが可能となります。その結果、脳の新たな情報処理の仕組みの発見につながることが期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

365体育投注 医学医療系
山田 洋 准教授

掲載論文

【題名】
Formation of brain-wide neural geometry during visual item recognition in monkeys
(視覚認知を行う霊長類における、脳の広範な領域の神経活動の幾何学情報)
【掲載誌】
iSience
【DOI】
10.1016/j.isci.2025.111936

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