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平成27年度科学技術分野 文部科学大臣表彰 科学技術賞 研究部門
数理物質系 重川 秀実
教職員等
科学技術の進歩により多くの領域で解析や開発の限界が現れ,単にこれまでの方法の延長では今後の展開が難しい状況が生じている。例えば,半導体素子はサイズが数10nmに達し,特性を制御するために導入した不純物の分布や界面の揺らぎが,目的とする機能に直接,大きな影響を及ぼす段階に至っている。こうした事態を打開するには,新しい物性(機能)を見出し活用することとあわせて,新しい発想に基づく新しい工学の概念を導入する事が必要不可欠である。ところが,基礎となる物性研究や評価は,一般に時間的,空間的に平均化された情報が基にされている。 本研究では,原子を観ることができる走査トンネル顕微鏡法とフェムト秒の時間分解能を持つ超短パルスレーザー技術を融合することで,超高速現象を捉えることができる新しい顕微鏡技術を開発することに世界に先駆け成功した。 本研究により,半導体中の一個の不純物原子の影響や,単一の量子井戸の中のスピンの超高速ダイナミックスを評価することが可能になった。 本成果は,これまでにない新しい情報を基にした現象の理解を可能にし、新しい機能の創成や新しい発想に基づく新しい工学概念の展開に寄与することが期待される。