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軽い運動による瞬き頻度の増減は実行機能の向上効果の個人差と関連する

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(Image by Roman Samborskyi/Shutterstock)
 軽い運動による瞬き頻度の変化と実行機能(目標に向かって行動を制御する能力)向上効果との関係を調べました。軽運動後の安静時に自発性(無意識の)瞬き頻度は全体として増えませんでしたが、個人ごとのばらつきに着目すると、その増減が実行機能向上の個人差と関連することが示唆されました。

 短時間のスローランニングのような軽い強度であっても、運動をすると、その後一時的に実行機能(目標に向かって行動を制御する能力)が向上することが分かっています。

 本研究チームは、齧歯類を用いた実験から、軽運動が脳幹のドーパミン作動性神経やノルアドレナリン作動性神経を活性化させることを明らかにしており、これらの神経回路が脳機能向上に関与しているのではないかと考えています。しかし、技術的な限界もあり、軽運動がヒトの脳内で実際にどのような変化を引き起こし、実行機能の促進をもたらしているのかは、いまだに決着をみていません。

 「目は口ほどに物を言う」と言われるように、私たちが無意識のうちに行っている瞬き(自発性瞬目、以後は「瞬き」と表記)は、ドーパミン作動性神経の活動に敏感に反応する指標として注目されています。そのため、本研究チームは、運動後に瞬きの頻度が増加し、それが実行機能向上と関連するとの仮説を検証することにしました。具体的には、10分間の軽運動を実施した健常若年成人を対象に行った過去の実験データについて、ここでは瞬きに着目して解析しました。その結果、予想に反し、運動後に瞬き頻度の顕著な増加は確認できませんでした。しかし、個人差に着目すると、興味深いことにそのばらつきが運動後の実行機能の向上効果と関連していることが示唆されました。

 今回の研究により、瞬き頻度を運動による脳への有益効果のバイオマーカーとして活用できる可能性が明らかになりました。測定環境の慎重な調整は必要ですが、瞬き頻度は目視やビデオでも簡単に測れるため、本研究チームは今後、運動意欲を重視した運動療法開発への応用を考えています。

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プレスリリース

研究代表者

365体育投注サイバニクス研究センター
征矢 英昭 客員教授

365体育投注体育系/ヒューマン?ハイ?パフォーマンス先端研究センター(ARIHHP)
桑水 隆多 助教

掲載論文

【題名】
Resting-state blink rate does not increase following very-light-intensity exercise, but individual variation predicts executive function enhancement levels
(超低強度運動後の安静時瞬目率は増加しないが、個人差が実行機能の向上レベルを予測する)
【掲載誌】
Journal of Physiological Anthropology
【DOI】
10.1186/s40101-025-00390-x

関連リンク

体育系
サイバニクス研究センター
ヒューマン?ハイ?パフォーマンス先端研究センター (ARIHHP)